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Hort Park 緑豊かなガーデンシティに誕生した“園芸療法ガーデン”

Hort Park 緑豊かなガーデンシティに誕生した“園芸療法ガーデン

現在の先進国において、都市部に住む人口の割合・都市化率は約8割と言われています。今後、この割合はさらに高まっていくと予想されています。
シンガポールは奄美大島とほぼ同じ国土面積しかない都市国家。従って、国民のほとんどが住宅地、オフィス街、商業地が混在する人口密度の高いエリアで暮らしています。世界的に見ても都市化率がかなり高い国と言えるでしょう。

そんなシンガポールで、都市部の緑地に注目が集まっています。その理由は「緑地が私たちの健康にもたらす良い効果」。木々や花々を見たり触れたりすることによって、不安やストレスなどの精神的な症状を改善し、肉体的にもより良い状態を保てることは医学的にも実証されており、「園芸療法」としての緑地活用が大いに期待されているからです。

Hort Park 緑豊かなガーデンシティに誕生した“園芸療法ガーデン

シンガポール南西部に位置するHort Park(ホート・パーク)内には、初の国立園芸療法ガーデンが完成しました。脳卒中等の患者さんや認知症の高齢者の治療を主たる目的に設計された850平方メートルの園芸療法ガーデンには、日陰スペースを作ってくれる大きな樹木が効率よく配置されています。その間には、視覚から刺激を与えてくれる色鮮やかな南国の花、そしてリラックス効果が得られるパステルカラーの花など多様な花々が集められています。さらには、東洋のバニラと称されるパンダンをはじめ、女性ホルモンのバランスを整えたり、高血圧の改善やストレス解消にも効果が認められているイランイランなど、東南アジア特有の香り豊かなハーブ類も多く植えられています。

Hort Park 緑豊かなガーデンシティに誕生した“園芸療法ガーデン

Hort Park 緑豊かなガーデンシティに誕生した“園芸療法ガーデン

Hort Park 緑豊かなガーデンシティに誕生した“園芸療法ガーデン

その植物たちのすぐ横には車椅子対応の歩道があり、介護者も一緒にゆっくり楽しめるようにベンチも数多く設置されています。植物の周りには蝶や小鳥、リスも訪れ、生き物たちを身近に感じることもできるのです。また、各所に噴水や楽器、水車も配置され、水音や風が奏でる音楽を楽しむアイデアも盛り込まれています。

Hort Park

Hort Park

Hort Park

もちろん設備だけでなく、マンパワーの育成にも力を入れています。公園に勤務するセラピストが園芸療法士の資格を取得し、患者や介護者と一緒に作業やプログラムを行うことができるよう政府主導で進めているとのこと。実際に、ガーデン内を散策してみると、各地域の高齢者グループが公園スタッフと一緒に栽培している植物も沢山目にすることができました。

Hort Park 緑豊かなガーデンシティに誕生した“園芸療法ガーデン

園芸療法を長年研究しているシンガポール国立大学 心理学科のクア・イー・ヒョック教授は「園芸療法の効用は脳卒中や認知症の症状改善だけでなく、免疫システムの細胞から分泌され情報伝達を担うタンパク質・サイトカインのバランスを整えて、鬱病や癌を予防する効果がある」と話しています。

日本と同様に高齢化が社会問題となっているシンガポールでは、2030年までに国民の4分の1が65歳以上になると言われています。高齢化が加速する中、高齢者の生活の質を保ち、さらには向上させるため、2015年に政府傘下の高齢化委員会が発足しました。委員会では「より良い高齢化社会に向けてのアクションプラン」を作成。30億シンガポールドルの予算を組み、公共交通機関と道路インフラの改修はもちろん、病床数を倍増させ、介護施設の収容能力を2025年までに7割以上アップさせる計画です。また、この委員会と国立公園局、保健局が連携し、園芸療法ガーデンを少なくとも10ヶ所は設置する予定です。

緑豊かなガーデンシティの特性を活かした園芸療法の可能性に着目し、高齢化対策にも積極的に活用するシンガポール。日本も、この国の政策から学ぶことは大いにありそうですね。

取材協力:National Parks Board

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