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甘川洞文化村 감천동문화마을 釜山のマチュピチュ?!アートプロジェクトで一大観光地と化した集落

韓国の首都ソウルに次ぐ第二の都市、釜山。山々に囲まれた港町で、古くから朝鮮半島と日本とを結ぶ貿易、交通の要衝として栄えてきた港湾都市です。その中心地釜山駅から電車とバスを乗り継いで約30分移動すると、いま、韓国の若者をはじめ、国内外の観光客から注目される観光スポット「甘川洞文化村(カムチョンドンムナマウル)」があります。

山肌に所狭しと建てられた家屋は様々な色でカラーリングされ、やっと人が通れるほどの幅の入り組んだ裏路地や坂道の先には、行きかう人々の目を奪う、個性的なストリートアート作品が点在する村です。ユニークで珍しい景観は、どこを撮っても写真映えするスポットばかり。そんなフォトジェニックな街並みは、SNS映えするスポットとして人気を博しています。

甘川洞文化村 【村を一望できるフォトスポットから望む、特徴的な階段式住居群】
【村を一望できるフォトスポットから望む、特徴的な階段式住居群】

現在では「アートな村」として脚光を浴び、年間30万人もの観光客が訪れる観光地となった甘川洞文化村。
しかし、その歴史は現在では想像できない苦難に満ちたものでした。

甘川村は今から約60年以上前、1950年代に太極道という新興宗教の信者たちや朝鮮戦争(1950~53年)の難民たちが北朝鮮側から逃れて山岸に集まって形成した、階段式のバラック街の一つでした。太極道信仰村と呼ばれており、極貧地域として知られていました。彼らは平地に住むことが許されなかったため、険しい山肌に沿った狭い土地にその場しのぎの掘立小屋を建て、水も通らず作物が育ちにくい痩せた土地で、急な険しい山を水の桶をかついで登る生活をしていました。なんとかお金を稼いだ人たちは徐々に村から離れていってしまったため、生活水準は低く、治安も良くない場所でした。
そんな貧しく厳しい生活の中で、村の女性たちは、手仕事で作ったものを並べて販売し、生活を支えていました。

【かつてのバラック小屋を再現した「小さな博物館」の展示品】
【かつてのバラック小屋を再現した「小さな博物館」の展示品】

しかし次第に、甘川村の古い街並みと南浦洞の街並みの両方を見ることが出来る眺望に惹かれたアーティストやフォトグラファーなど芸術家が少しずつ集まるようになり、村にアートギャラリーを作り始めました。そして、村のマイナスイメージや貧困からの脱出、活性化のため、村全体を身近なアート作品を展示する場所にする、という取り組みが始まったのです。これは、地域芸術家と地元住民が協力し、村の再生と保存を目的としたプロジェクトと呼べます。

2009年には、文化体育観光省主催の公募事業「パブリックアートプロジェクト」に、地元の芸術団体「artfactory in DADAEPO」が『夢みる釜山のマチュピチュ』という企画を応募し、選定されました。このプロジェクトが推進され、アーティストを中心に地元の小学生と地域住民の協力を得て作品制作が行われ、村には多くのアート作品が設置され、カラフルな壁絵も描かれました。その翌年、2010年には同省によって路地の保存、再生を目的とした『迷路美路』(韓国語でミロミロ)というアートプロジェクトが推奨され、路地や空家再生プロジェクトなどの住居環境の整備と壁画事業が行われました。アーティストの作品を展示したギャラリーも6つ誕生し、これがきっかけとなり移住してきたアーティストもいるほどです。現在、彼らアーティストは地域住民に作品作りを教えながら芸術活動をしています。

そして、2013年に行われた「民官協力フォーラム」主催、安全行政省後援で行われた「2013 民官協力優秀事例公募大会」で、甘川洞文化村は大賞の大統領賞を受賞するなど、町おこしの成功例としても知られるようになりました。さらに、ガイドブックにも掲載されるようになり、国内だけでなく世界中から観光客が押し寄せるようになったのです。

今では、住民の多くが甘川洞文化村の運営に携わるようになり、多くの観光客が楽しむ、明るく穏やかな村へと変貌を遂げました。現在でも、村の空き家を工房、ギャラリー、ブックカフェやレストラン、ゲストハウスなどに改造するほか、空き地と屋上を生態庭園にする生活環境改善事業が推進され、日々村は進化しています。

このような村の過去と現在を頭の片隅に置きつつ、甘川洞文化村のアートに触れる旅をご紹介します。
地下鉄1号線の土城(トソン)駅からマウルバスに乗り換え約10分、甘川洞のバス停で下車し、メインストリートへ進むと、入り口付近にツーリストインフォメーションがあります。甘川洞文化村は全体が矢印に沿って進むスタンプラリーのような村の作りになっているため、効率よく回るにはスタンプラリーの台紙を兼ねたガイドブック(地図)を手に入れましょう。スタンプを集めると、最後には記念のポストカードが貰えます。なお、現在では日本語のガイドブック(2,000ウォン)もあります。

【日本語のガイドブック(地図)。裏はスタンプラリーの台紙になっている】
【日本語のガイドブック(地図)。裏はスタンプラリーの台紙になっている】

ツーリストインフォメーションを出て、スタンプラリーに沿って村のメインストリートを歩いてみると、観光客相手のカフェやお土産店が立ち並ぶ通りに出ます。また、家々にはカラフルなペイントやオブジェが施されているのが目に入るでしょう。

【空から落ちてきたプレゼントを受け取った人たちが音楽に合わせて踊りながら行進する姿が描かれている(写真右)】
【空から落ちてきたプレゼントを受け取った人たちが音楽に合わせて踊りながら行進する姿が描かれている(写真右)】

屋根の上にもオブジェがあります。鳥のように見えますが、よく見ると、人の顔になっています。

屋根の上にもオブジェがあります。鳥のように見えますが、よく見ると、人の顔になっています。

誰もが空を飛ぶという想像をしたことがあるように、たまにはすべてのことを忘れて鳥のように自由に空を飛んでみたい、という人々の思いを代弁したような作品です。

村のあちこちには、魚のアート作品もあります。魚モチーフのアートが多いのは、元々ここで暮らしていた住民に魚市場で働く人が多かったためだと言われます。家の壁にもカラフルな魚のモチーフが貼られ、道に迷わないように矢印の代わりになっている場所もあります。
無造作に書かれた落書きも見事なアート作品になっています。

村のあちこちには、魚のアート作品もあります。

展示案内館『スカイフロア』

展示案内館『スカイフロア』では、スタンプラリーの記念品のポストカードがもらえます。書いたら係員に渡すか、黄色か赤色のポストに入れましょう。黄色のポストはすぐ配達される普通郵便、赤色のポストは1年後に配達される郵便です。

展示案内館『スカイフロア』

『スカイフロア』の屋上からは龍頭山、市内、釜山港、甘川港などの全景が見渡せます。

『スカイフロア』の屋上からは龍頭山、市内、釜山港、甘川港などの全景が見渡せます。

多くのアート作品に触れながら村の奥に進んでいくと、村を見下ろす高台に到着します。ここもまた、美しい山々と港、そして村が見渡せるビュースポットです。この場所には、フランス人作家、サン=テグジュペリのベストセラー『星の王子さま』の王子さまと砂漠のキツネがガードレールに座り、村をのんびり眺めています。王子さまとキツネの真ん中に座って写真を撮るのが人気になっています。

【星の王子さまと砂漠のキツネが地球を旅行中に高い所に座ってカラフルな村全体を見下ろしている】
【星の王子さまと砂漠のキツネが地球を旅行中に高い所に座ってカラフルな村全体を見下ろしている】

人間の下半身になっている鉢植えや、大きな羽の絵が描かれている家の壁などもあります。絵の前でポーズをとれば天使になれるということで、人気のスポットとなっています。カラフルにペイントされた壁や階段もSNSに向いた絶好の場所となっています。

カラフルにペイントされた壁や階段もSNSに向いた絶好の場所となっています。

カラフルにペイントされた壁や階段もSNSに向いた絶好の場所となっています。

カラフルにペイントされた壁や階段もSNSに向いた絶好の場所となっています。

カラフルにペイントされた壁や階段もSNSに向いた絶好の場所となっています。

カラフルにペイントされた壁や階段もSNSに向いた絶好の場所となっています。

カラフルにペイントされた壁や階段もSNSに向いた絶好の場所となっています。

3時間ほどゆっくり巡ると、村の入り口へ戻ってきます。ここから見渡す村の景色は山肌に沿って建てられた建物の景観が良く見えます。

【甘川とひとつになる】
【甘川とひとつになる】

この作品を作ったアーティストのムン・ビョンテクは、人々の心の中にあるふるさとを、甘川洞文化村に映し出そうとしたそうです。人型のオブジェに甘川洞文化村の景色が描かれており、特定の位置から見ると実際の背景と重なって、村と人が一体化したように見える作品です。

村の歴史を感じながら、さまざまなアート作品に出会える新しい観光地、甘川洞文化村。カメラを持ってぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

甘川洞文化村
http://www.gamcheon.or.kr/

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